インボイス制度がスタートし、取引先がインボイスに対応しているか否か、多くのフリーランスや個人事業主の方々が頭を悩ませているのではないでしょうか。
「取引先が未登録だと、自分はどうなるの?」「消費税の計算が複雑になるのでは?」といった不安の声もよく耳にします。
この記事では、そんなあなたに向けて、取引先がインボイスに対応していない場合に受けられる経過措置や、取引先のインボイス登録の有無に影響されない簡易課税制度について解説していきます。
取引先が未登録でも「今は」経過措置で80%の控除が可能
こちら側が原則計算により消費税の申告を行う場合、2026年9月30日までは、取引先がインボイスに対応していなくても、80%控除を受けられます。
なぜなら経過措置が設けられており、インボイス制度が導入された後、免税事業者との取引は3年区切りで段階的に一定割合の控除が可能で、2026年9月30日までは、取引先がインボイスに対応していなくても、80%の控除が受けられる期間となっています。
- 2023年10月1日~2026年9月30日まで…80%
- 2026年10月1日~2029年9月30日まで…50%
- 2029年10月1日以降…0%
例えば本体価格10,000円+消費税1,000円=11,000円の支払いを例にすると、
支払った消費税1,000円の80%=800円を控除する事が可能となります。
経過措置は申告時に適切な処理が必要
経過措置を受けるためには、会計ソフトで専用のコードを設定するなど、記帳の段階から処理を行う必要があります。
なぜなら、申告後に訂正して経過措置を受ける事が出来ないからです。
具体的には、取引先がインボイス登録を行っていない(インボイスの要件を満たしていない)場合に、これまでと同じように100%消費税の計算上控除して申告をしていたとします。
このような場合は、訂正して「80%でした」とすることはできずに、控除自体ができなくなります。
したがって80%控除する場合は、帳簿を付ける段階からこれは経過措置適用の支払いです。という形で記帳する必要があり、最初から経過措置の適用を受けるものとして処理をしていない場合は認められません。
請求書を取り込んで仕訳をしている場合はソフト側で判定してくれると思いますが、ご自身での確認も必要となってきます。
逆を言うと、自分が発行する請求書はインボイスの記載要件を満たすように注意しましょう。
請求書発行ソフトを利用すれば、請求業務や経理の効率化に加えてインボイス対応も安心なのでおすすめです。
簡易課税制度(2割特例も)なら取引先の登録は関係なし!
なお簡易課税制度を選択している場合は、取引先のインボイス対応の有無は、消費税の計算に影響しません。
なぜなら簡易課税制度は、課税売上高に基づいて消費税を計算するため、仕入に関する消費税額は概算で計算します。
そのため、適格請求書の保存が不要となり、取引先の登録状況を気にする必要がありません。
※ただし、所得税・法人税では支払に関する請求書等の保存は必要となるのでご注意下さい。
同じ考え方で2割特例により計算する場合も相手先の登録は関係ありません。
ご自身が免税事業者の場合も、消費税申告自体がありませんので関係無い事となります。
少額特例に関しては割愛していますが、対象の場合は同様に取引先の登録の有無は関係ありません。
簡易課税制度を選ぶメリットとデメリット
簡易課税制度には、以下のメリットとデメリットがあります。
- 取引先のインボイス対応の有無を気にする必要がない。
- 消費税の計算や事務負担が軽減される。
- 設備投資などを行って本来還付が発生する場合でも還付は受けられない
- 一度選択すると、2年間は変更できない。
納税額は原則計算より高くなる場合も、低くなる場合もあります。
簡易課税を選ぶべきか否か
簡易課税制度を選ぶかは、事業内容や売上高など状況によって異なります。
- 人件費が経費の多くを占める業種
- 取引先(取引金額)の多くが未登録の場合
- 消費税に関する事務負担を軽減したい場合
このような場合は、簡易課税制度が有利になる可能性が考えられます。
ただし、設備投資を行い多額の消費税を支払った年でも簡易課税の場合は還付は発生しませんので選択する際は注意が必要です。
- 納税額はどちらが有利になるか?
- 数年内に大きな設備投資の予定は無いか?
- 記帳やインボイスの管理など消費税に関する事務負担を軽減したいか?
などを基準に判断するのがおすすめです。
また、簡易課税制度は「基準期間の課税売上高が5,000万円以下」が条件となり、全ての事業者が選択できる訳ではありません。
※基準期間は2年前とイメージすると大体良いと思います。(厳密には違う場合もあるのであくまでイメージです)
選択するには事前に届け出が必要となります。
まとめ:取引先が未登録の場合でも、対応可能
インボイス制度は複雑ですが、経過措置や簡易課税制度(もしくは2割特例)といった制度を利用することで、取引先が未登録の場合でも、対応することができます。
簡易課税制度は注意点を考慮して選択しましょう。判断がつかない場合は専門家である税理士にご相談することをおすすめします。
また、簡易課税や2割特例を選択したとしてもインボイスの発行義務については変わりませんので、自分が発行する請求書はインボイスの記載要件を満たすように注意しましょう。
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