これまでインボイス制度の概要と売り手と買い手それぞれの留意点について書いてきました。
今回は実務的な論点として事務所の家賃など、支払い形態が口座振替で毎月請求書等のやり取りが行われない場合はどのようにすれば良いのか。という点についてまとめてみました。
インボイス制度において口座振替の事務所家賃などはどうなるのか?
インボイス制度が開始されてから仕入税額控除を行うためには、相手の登録番号等の決められた記載事項が載っている適格請求書等(インボイス)の保存が必要になります。
適格請求書等(インボイス)として求められる記載事項は登録番号のみではありません。
これまで請求書に記載されていたような内容に加えて登録番号、適用税率、税率ごとに区分した消費税額等が記載されて初めて要件を満たします。
なお、これらの記載事項は複数の書類を組み合わせる形でもOKです。
事務所の家賃など、通常口座振替による引き落としの場合は毎月請求書等のやり取りがありませんので、これらの記載事項を満たすことができません。
なのでそのままでは仕入税額控除が認められないという事になりかねません。
ではこのような場合はどうすれば良いのでしょうか。
登録番号など必要な情報はあらかじめ契約書に記載しておくなどの対応が必要となります。
具体的にはこれから契約を結ぶ場合、すでに契約を結んでいる場合とに分けてそれぞれ見ていきましょう。
これから契約を結ぶ場合
これから契約を結ぶ場合はインボイス制度への対応として契約書に新たに追加で以下の内容を盛り込みます。
・発行者の名称及び登録番号
・取引相手の名称
・取引内容
・税率ごとの対価の合計額及び適用税率
・消費税額等
このうち、発行者の名称、相手取引の名称、取引内容は既存のこれまでの契約書でも記載していたかと思います。
書式によっては消費額等も記載していたケースもあるかもしれませんが「登録番号」「適用税率」「消費税額等」などを既存の契約書に盛り込めば不足しているほとんどの記載事項がカバーできます。
とはいえこれだけでは全ての要件を満たしません。もう一つ、取引年月日を示すものが必要となります。
これは口座振替で引き落としがかかった通帳で示すことができます。
つまり、売り手としては契約書に新たに盛り込む。
買い手としては盛り込まれている事を確認し、さらに通帳を保存する。という事が必要になります。
すでに契約を結んでいる場合
これから契約を結ぶ場合は契約書に新たに盛り込めばほとんどが事足りましたが、すでに契約を結んでいる場合はどうすれば良いのでしょう。
状況としてはこれから契約を結ぶ場合と一緒です。記載されていない不足事項を如何にして補足するかです。
新たに契約書をまき直すのも良いかもしれませんが、そこまでする必要はありません。
契約書で不足しているインボイスの記載事項を別途通知を受け保存すればOKとなっています。
通知方法に関しては紙ベースでもメールなど電子的方法による通知でもどちらでも大丈夫です。
当然、取引年月日を示すものとして通帳の保存は追加で必要となります。
つまり売り手としては契約書に不足している記載事項を別途通知する。
買い手としては通知事項と通帳を保存する事が必要になります。
事務所の家賃以外の場合
これは事務所の家賃限定の話ではありません。
取引の都度、請求書等の交付を受けない場合には同様です。
これから契約を結ぶ場合は、契約書に記載+通帳保存
すでに契約を結んでいる場合は、不足事項を通知+通帳保存
整理して考えるとインボイスとして(複数書類となっても)必要な事項が記載されており、それを保存しているかどうかという点がインボイス制度における仕入税額控除適用の肝となります。
事務処理は煩雑になりますが、気を付ける事は発行書類に必要事項が記載されているかというシンプルなものになります。
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